このような問題に対し、農林水産省は、農林水産知的財産戦略総合推進事業の一環として「農林水産知的財産保護コンソーシアム(仮称)」の設置を決定しました。
これは、国が一定の補助金を出し、中国における商標の監視業務や、商標の使用状況調査・情報収集業務を行います(実際の業務は委託を受けた民間団体等が行う)。
呼びかけに応じた都道府県や全国レベルの農林水産業関連団体、日本貿易振興機構(JETRO)や弁理士会がメンバーとなり、2009年01月にも試行を始め、04月に正式に発足される予定です。
このようなコンソーシアムを設置することで、農林水産物に係る日本ブランドについて海外展開の保護及び強化が期待されます。
また、各自治体も中国商標トラブルに対していつまでも手を拱いているわけではありません。
例えば、長崎県では商標「長崎」を、魚介類,茶,菓子,しょうゆ,日本酒などの指定商品について、2008年10月に中国へ出願いたしました。
同時期に長崎県は北京で「北京長崎フェア」を開催し、8日間で約36,000人を集客しています。
長崎県物産流通推進本部は「県内企業の中国進出の足掛かりができた」と評価する一方で、「『長崎』を利用される恐れも増した」とし、今般の商標出願を「輸出企業が無用なトラブルに巻き込まれることがないように事前に対処した」と話しています。
そして、このような中国商標問題を防ぐためには、どう対応したらよいのでしょうか。
それは、先ず中国国内において商標出願・登録を行い、早期の権利化を図ることです。
弊所サイト内の中国商標事情(2)及び中国商標事情(3)において述べておりますように、中国や台湾では日本と同様「先願主義」を採用しており、ブランドを保護するためには、現地でいち早く権利化することが肝要であると考えられます。
また、既に冒認出願をされてしまった場合はどうすればよいでしょうか。
初めにすべきは、「誰が」「どんな商標を」「どの分類(指定商品)に」出願・登録しているのか、という事情を把握することです。
さらに、相手方の商標が冒認出願であるという主張を確かなものとするために、資料や証拠を収集します。
異議申立て期間(審査が終了してから公告後の3か月)は異議申立てをすることが可能で、商標登録後も取消請求することができます。
異議申立てにせよ、取消請求にせよ、「相手方が冒認出願である」という主張を認めさせるには、相応の証拠を提出する必要がありますので、常日頃から証拠を収集し、過去の関連資料等も整理しておくことで、突発的な事案にも柔軟に対応することが可能となります。
最後に、中国商標問題に関しては、日本国特許庁、日本貿易振興機構(JETRO)が対応窓口の設置、各自治体関係者を対象としたセミナー等の開催をしています。
また、弊所でも中国商標出願などの相談対応をしておりますので、問題が起きてからではなく、事前に手を打たれるよう、関係者各位に強く勧める次第です。
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