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中国商標事情3

中国商標事情3
 
 
狙われる「日本の地名」

2008年5月21日放映のテレビ朝日系「スーパーモーニング」で「日本の地名が狙われる」と題されたコーナーに弊事務所、所長がもとめられてコメントした内容を更に詳しく解説を致します。

(1)  

中国及び台湾の商標制度は我国商標制度と基本的に同一で、先願主義、審査主義を採用しておりますので、同一又は類似商標が出願された場合には、1日でも早く先に出願された方に商標権が付与され、かつ各国独立の原則、属地主義の原則により当該国の法律に従い審査され、他国の影響を受けないで審査されます。
ところで、TV朝日の「スーパーモーニング」で取り上げられた「狙われる日本の地名」という特集番組は、我々日本人にとっては重大問題ですが、当該国においては商標法に基づいて適法に付与されたものですから、動機に不純があったとしても適法な商標権であることは間違いありません。
しかし、中国商標法第10条には「一般に知られた外国地名は、商標とすることができない」と規定されており、外国において周知な地名は商標登録を拒絶できるよう法整備が一応なされております。この規定に対応する規定は我国商標法には有りませんが、商標第3条第1項第3号には「その商品の産地、販売地・・・を表示する商標」は原則拒絶されます。しかし、「使用された結果周知・著名」となった場合には例外的に商標法第3条第2項に基づき商標登録が認められます。

   
(2)  

今、問題となっている中国あるいは台湾で登録あるいは出願されている「日本の地名」としては、例えば「青森」「佐賀」「京都」「鹿児島」「富山」(但し、「富山」関連の場合、登録を含めて73件とのこと)「浜松」「さぬき」「日光」「佐野ラーメン丼」など、その出願・登録件数は枚挙にいとまがなく、当事者はその解決に多大な費用と労力をかけているものと推察されます。
そもそも、何故中国、台湾の人が「日本の地名」を商標登録するのか疑問かと思いますが、商標権の機能として「自他商品識別機能」「商品品質保証機能」という機能を有しております。例えば、商品「りんご」に「青森」という商標(ブランド)を付して販売した場合、消費者はそのブランドを見ただけで、「おいしいりんご」、「高級りんご」というイメージを持ち、少々値段が高くとも購入するという動機になり、そのブランドには多大な財産的価値を保有することになります。
すなわち、商標権は有名になればなるほど、「商品品質保障機能」は大となり、大きな財産的価値を有することとなり、その商標権は財産権として自由に売買できます。
中国、台湾の人が「日本の地名」あるいは「地名を含んだ商標権」を取得するのは、その財産的価値に注目して、商標権を取得し、その商標権を高く売りつけることを目的とするする、所謂「商標ブローカ」ではないかと思います。そういう意味で商標権取得の動機には不純性がありますが、登録自体は法律に従って取得されたものでありますから、違法性はありません。
このような、「商標ブローカ」と称されるような人は少なくとも我国でも30年位まえには存在しておりましたが、現在は余り聞きません。

   
(3)  

企業が中国、台湾等に進出を企画している場合、担当者は単に相手国に「物」を輸出すればよいと安易に考えているのではないかと思います。
先ほどの、「青森」なる商標ですが、これは中国特許庁の審査で公告(許可)され、「青森県」が異議で潰した事件ですが、青森県は「中国」における「青森」という商標権を潰すため、その商標権が中国商標法第10条に該当すること、すなわち、「青森」なる地名が「一般によく知られた外国地名」であることを立証するため、青森県は「青森ねぶた祭り」「2003年の青森冬季アジア大会」「三沢基地(三沢市)」などを取り上げた中国人民日報の記事や青森りんごを紹介した中国の雑誌などの資料をかき集め、(中国知財専科より)、それにより異議申し立てで商標権の発生を阻止したとのことです。
我々弁理士業務の中で、周知・著名性を立証することはなかなか困難な仕事で、先日弊所は商標法第3条第2項の例外規定に基づき商標権を取得いたしました。
そもそも、中国商標法第10条に該当するや、否やは、原始的には中国特許庁の担当審査官が判断するものですが、この規定の趣旨は「中国の公衆に知られていない外国地名」は登録を認めるという意味でもあります。しかし、一担当審査官が我国の「青森」という地名を知っていたか、どうか、また、仮に、知っていたとしても、中国の公衆によく知られていたか、どうかは事実問題であって、第10条に該当する、との判断は一審査官では不可能ではないかと思います。

   
(4)  

この度「スーパーモーニング」で取り上げられた「狙われる日本の地名」なる特集番組は、中国等への進出に当たって極めて深刻な問題点を提起したものですが、相手国に輸出するに際しては、相手国の法制度を無視しては正常なビジネスはできません。
「攻撃は最大の防御」という諺がありますが、輸出するにあたっては、相手国の法制度等を調査・研究し、少なくとも、事前の調査は不可欠で、その場合のコストは「防御」に比し極めて安価です。
仮に、商品「りんご」について「青森」なる商標権を中国人の方に取られた場合には、青森県あるいは関連企業がその商標を付して「りんご」を中国に輸出した場合、当然ながら商標権の侵害となります。本件の場合、関係者の努力により、公告段階の異議申し立てにより幸いにも「青森」なる商標権の発生を阻止できたため、実害は生じなかったものの、阻止のための努力及びコストは如何ばかりかと思います。
法律諺に「法律を知らないものは保護しない」という言葉があります。相手国に進出するに当たっては、事前の調査が不可欠であって、事前の調査なしに進出することは、私としては「甘いんじゃないかと」と思う次第であります。

 
担当(弁理士 和田 成則