商標法上には、「商標」の定義規定が商標法第2条第1項に有ります。そこには、概略すると「この法律で商標とは、文字、図形、記号、・・・あって、業として商品を生産等する者が商品について使用をするもの」と規定されています。従って、上記被告の行為は、商標「RISOGRAPH」等を業として商品「インクボトル」について使用するものであり、この定義規定だけで判断すると、この被告の行為は、登録商標の使用に該当し、商標権侵害となります。
しかしながら、商標とは、そもそも商標権者が販売をする商品を他社の商品と識別するために用いられるいわゆる識別標識であり、その商品が商標権者により販売等されたものであることを示す表示です(出所表示と言います)ので、形式的に見れば「商標の使用」に該当する場合であっても、識別標識、出所表示として商標が使用されていなければ、商標の使用には該当せず、商標権侵害とはなりません。
このように、商標権侵害に該当するか否かを判断する際には、形式的に見て「商標の使用」に該当するか否かにより判断するのではなく、実質的に見て、商標の使用に該当するか否か、すなわち商標の有する識別標識としての機能、出所表示機能等を害してしているか否かにより判断します。