本件事件は請求人から提起された無効審判事件に対し、特許権者である被請求人が応訴した事件で、訂正明細書を認める。本件審判請求は成り立たない、との審決を得たものです。
事件番号 無効2014−800109号事件(PDF/2,959Kb)
<弊所コメント>
請求人は被請求人が特許権第2904334号「徒過装置」(以下「本件特許権」という)を侵害していると認められる、として警告書を発送するとともに判定を請求、この判定請求に対して被請求人は本件特許権に対し無効審判を請求したものであります。
請求人は無効審判において、本件特許権が出願前公知であること及び本件特許権の明細書に記載不備が認められ、本件特許権は無効である、旨を主張しました。
被請求人はそのような主張に対し答弁書及び訂正明細書を提出。
本件事件において、請求人の記載不備の主張に対し訂正明細書を提出し、その訂正明細書が適法であると認められことは事件を有利に進められたものと思います。
特許権侵害事件が発生した場合、当該権利を無効化できるような証拠があれば事件を有利に進めることは可能であり、特に特許法第104条の3には「無効にされるものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない」と規定されており、無効化できるような有力な証拠があれば特許権は事実上死に体の状況になります。
したがって、特に特許権侵害事件が発生した場合、相手方は証拠探しに最大限のエネルギーと資金を注がなければなりませんが、本件事件においても請求人はUS特許を初め、国内公報をくまなく調査し、提出された証拠も相当な量でした。 しかし、残念ながら本件特許権を無効化できるような有力な証拠を発見できなかったように思われます。つまり、証拠は量ではなく質が重要であり、特に主引例を探しだすことは中々困難かと思います。 弊所においても侵害事件を提起し、相手方は無効化証拠をUSから探しだし、その証拠が有力な証拠であったため、その事件は残念ながら弊所の敗訴となったケースもあります。 事件の成否は証拠如何によるものであることをご理解下さい。
注 注目すべき判例について従来判決の要旨部分を抽出・要約して弊所コメントを加えておりましたが、判例23からは事実関係を明確にするため判決全文を掲載して弊所コメントを加えました。ご了承下さい。