この事件は本願商標「TVプロテクタ」(標準文字)と引例商標「PROTECTOR」(標準文字)の類比が争われた事件で、特許庁は本願商標は引例商標に類似すると認定して拒絶査定をし、原告はその拒絶査定に不服申し立て審判を請求、特許庁は「本件審判の請求は、成り立たない」と審決したが、原告はその審決に対し、知的財産高等裁判所(以下「知財高裁」といいます)にその審決の取り消しを求めて本事件を提起したものです。
私はこの知財高裁の判決は正鵠を得たものと思います。 本願商標は欧文字「TV」と「プロテクタ」を組み合せた結合商標であり、その文字間には「−」「・」などは介在してなく、本願商標はその構成から「TV」と「プロテクタ」が分離されることなく一体構成の「TVプロテクタ」と判断されるべきであり、かつ何等観念を有しない造語商標であります。 なお、両文字間に「−」や「・」が介在されている場合にはこの判決も異なったかも知れません。 それに対し、審決においては「一体不可分の結合商標と見るべき特段の事情が認められない」として、「プロテクタ」部分を殊更分離して、本願商標と対比して類似商標と判断していますが、言わばこの知財高裁の判決は特許庁の判断を覆した逆転判決であります。
欧文字とカタカナ文字等を組み合わせた結合商標の調査依頼・出願業務等は我々日常業務の中でよくあるケースですが、この知財高裁の判決は他の判例とともに商標の類比判断をする場合に大変参考になります。
注 注目すべき判例について従来判決の要旨部分を抽出・要約して弊所コメントを加えておりましたが、判例23からは事実関係を明確にするため判決全文を掲載して弊所コメントを加えました。ご了承下さい。