本件は「サトウの切り餅」でおなじみの切り餅に対し、越後製菓鰍ェ自社の所有する特許第4111382号(以下「本件特許権」といいます)を侵害するとして、佐藤食品工業鰍ノ対し侵害差止等を求めて東京地方裁判所に事件を提起したものです。
東京地方裁判所では、被告の主張が認められ、サトウの切り餅は本件特許権の技術的範囲に属さない、として原告である越後製菓鰍フ主張を棄却しました。
その判決に越後製菓鰍ヘ承服できず、知的財産高等裁判所(以下「知財高裁」といいます)に控訴し、この度の知財高裁の判決となった次第ですが、知財高裁は東京地方裁判所の判決を覆し逆転判決を言渡しました。
この判決が逆転判決であること、餅という商品が消費者になじみの商品であることおよび損害賠償請求金額が14億8500万円という高額であることから注目されております。
この事件おける最大の争点は本件特許権の構成要件Bの「載置底面又は平坦上面ではなく・・・・側周表面」の解釈でありますが、知財高裁は「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載は、「側周表面」であることを明確にするための記載であり、載置底面又は平坦表面に切り込み溝又は溝部(以下「切り込み部等」という)を設けることを除外するための記載ではない、と判示した点にあります。
それに対し、東京地方裁判所は構成要件Bの記載について「載置底面又は平坦上面」には切り込み溝を設けず、との解釈について、「上側表面の立直側面である側周表面」に切り込み溝等を設けることを意味するもの、と解するのが相当であると判示し、サトウの切り餅は本件特許権の技術的範囲に属さないと判断したものであります。
すなわち、この度の判決は切り溝等の位置の解釈について、東京地方裁判所と知財高裁の判断が真っ向から異なる点に特徴があり、そのために知財高裁において逆転判決となった次第であります。 |