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インクカートリッジ再生品の特許権差止請求控訴事件


重要判例 インクカートリッジ再生品の特許権差止請求控訴事件
平成18年(ネ)第10077号 (原審・東京地裁平成16年(ワ)第26092号)
 
【事案の書誌的事項】
 
第2審(知的財産高等裁判所)
 
平成19年5月30日 判決
 
控訴人    セイコーエプソン株式会社
 
被控訴人  株式会社エコリカ
 
裁判長    飯村 俊明
 
【主 文】
   
  • 本件控訴を棄却する。

  • 訴訟費用は控訴人の負担とする。

【これまでの経緯】
   
  1. 控訴人は家庭用プリンターの大手メーカで、インクカートリッジについて特許権(第325707)を有する。

  2. 被控訴人はインクカートリッジの再生品を製造販売するリサイクル業者である。

  3. 本事件は被控訴人の販売する製品が控訴人の所有する特許権を侵害すると争われて事件で、東京地裁では控訴人(原告)の主張が認められず、控訴人が知的財産高等裁判所(以下「知財高裁」という)に控訴した事件である。

【争点】
   
  • 本件事件は第1審(東京地裁)から、分割出願が適法か、どうかが争われた事件で、知財高裁においてもその点が争点となった。

  • しかし、知財高裁においても「インク取り出し口の外縁をフィルムより外側に突出させる」との構成は一連の課題解決のため必要不可欠の要件と認められる。しかし、「インク取り出し口の外縁をフィルムより外側に突出させる」との記載は当初明細書等のいかなる部分を参酌しても上記の構成を必須の構成要件としない技術思想は一切開示されていない、と認定。

  • その結果、本件特許権は分割要件を欠く不適法なものであるから、出願日の遡及は認められず、よって、本件特許権には無効理由があるため、特許法第104条の3第1項により特許権の行使を認めなかったものである。

【弊所コメント】
   
  • この知財高裁の判決は東京地裁の判決と同旨であって、弊所ホームページ重要判例14をご参照下さい。

  • 分割出願は弁理士業務として実務上よくあるケースであり、分割出願にあたっては当初明細書等を精査しなければなりません。特に本年4月1日からの分割出願に当たっては分割出願した特許出願について、新規性、進歩性がある旨を上申書によって主張しなければならず、その点各位はご注意下さい。

  • 私はこの知財高裁の判決は妥当と思いますが、実務上類似商品が出願後出てきた場合、特許権者はその類似商品が含まれるようなクレームの補正・分割を希望することがあり、その場合実務者としては当初明細書等と矛盾することを主張しなければならない場合があります。しかし、基本は当初明細書等から外れた主張は無理かと思いますので、その点実務者及び出願人は肝に銘ずべきかと思います。

  • この度の判決は当初必須要件と主張していたクレームを分割後必須要件ではないと主張したもので、当初発明を軌道修正したようにも感じられます。

  • 私は地裁判決に対し、原告は恐らく控訴するだろうと思っておりましたが予想があたりました。

  • しかし、この高裁判決に対して控訴人が上告するかどうか、予測できませんが、私としてはこの判決の行方に注目したいと思います。

 
担当(弁理士 和田 成則
 
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