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平成11年(行ケ)第10817号 審決取消請求事件


平成11年(行ケ)第10817号  審決取消請求事件(WHITE FLOWER事件『事案の書誌的事項』)
 
 
【事案の書誌的事項】
 
第2審 知的財産高等裁判所
 
平成18年4月11日口頭弁論終結
 
原告  小林製薬株式会社
 
被告  ホウ ヒン パク フア ヨウ マニュフアクトリーリミテツド
 
裁判長 佐藤 久夫 
 
【主 文】
   
  • 特許庁が取消2004−31463号について平成17年10月18日にした審決を取り消す。

  • 訴訟費用は被告の負担とする。

【特許庁における手続の経緯】
   
  1. 被告は、「WHITE FLOWER」の欧文字を横書きしてなり、指定商品が第5類「薬剤、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯・・・歯科用材料」と書換登録された登録第2635064号(以下「本件商標」という)の商標権者である。

  2. 原告は平成16年11月9日、本件商標の指定商品中「薬剤」について、商標法50条1項に基づき、本件商標を取り消すことについて審判を請求した。

  3. 特許庁は同審判事件を取消2004−31463号事件として審理し、平成10月18日、「本件審判の請求は、成り立たない」との審決をした。

  4. 本件事件は上記特許庁の審決に対して、知財高裁に原告が出訴したものである。

【審決の要旨】
   
  • 被告は「白花油/WHITE FLOWER」印の「薬用酒」を香港、米国、カナダ等に販売しており、個人輸入の形で我が国に輸入されていたものである。即ち、被告は日本の消費者の注文に対し、個人輸入の範囲に限り応じていたものであるが、審決においては、この行為を商標法2条3項2号に該当する「商品・・・に標章を付したものを譲渡」する行為と認定して、被告の商標使用行為を認めた。

  • 商標登録から約9年半経過後に「医薬品輸入承認申請書」を厚生労働省に提出したことについて、厚生労働省の許可が下りていないため、我が国で本格販売ができなかったものであるから、販売できなかったことについて正当な理由がある、として、審判請求を退けたものである。

 
【裁判所の判断】
   
  • 商標法第50条2項の本文は、商標の不使用による登録取消しの審判請求があった場合、被請求人は、日本国内における登録商標の使用を証明しなければならない、と規定しているものである。従って、商標法2条3項2号にいう「譲渡」が日本国内でおいて行なわれたというためには、譲渡行為が日本国内で行なわれる必要があるというべきであって、日本国外に所在する者が日本国外に所在する商品について日本国内に所在する者との間で譲渡契約を締結し、当該商品を日本国外から日本国内に発送したとしても、それは日本国内に所在する者による「輸入」に該当しても、日本国外に所在する者による日本国内における「譲渡」に該当するものとはいえない。
    従って、日本国内に在住する個人消費者が個人輸入により「白花油/WHITE FLOWER」印の「薬用酒」を購入したとしても、被告が日本国内において商標法2条3項2号にいう「譲渡」行為を行なったとは認められない。

  • 被告本人と関係を有しない訴外米田薬品が厚生労働省に上記「医薬品輸入承認申請書」を提出したとしても、その提出時期は本件商標が設定登録(平成6年3月31日)されてから約9年6ケ月経過後である。その間、被告(ないしその輸入・販売代理店)において医薬品の輸入承認申請につき何らかの妨げが存在したことをうかがわせる事情も認められず、上記申請書提出前にこのような長期間不使用の期間が継続していたことを考慮すれば、本件において、本件商標を使用していないことについて正当な理由がある、とは認められない。
    以上のような理由から、特許庁の審決を取り消したものである。

【弊所コメント】
(1)  

商標法第50条に基づく不使用取消し審判請求事件は、私ども弁理士がよく行なう事件である。その場合、使用についての挙証責任は被請求人(商標権者)にあるが、請求人の代理人としては少なくとも、商標権者のホームページ等を検索して、使用していないことの蓋然性が高いことを確認して、この審判を請求するのが一般的である。

 (2)  

本件知財高裁の判決は、属地主義の原則にならい、日本国内における「使用」というためには商標権者による譲渡行為が日本国内で行なわれることが必要であり、単に日本に向けて当該商品を発送及び日本国内に居住する需要者が当該商品を受領したことでは足りない、と判断したが、その属地主義に基づくこの判決は私としては首肯するものである。
なお、不使用に関する正当理由の有無については、コメントを省略する。

(3)  

商品の流通は国境を越えて展開されている。インターネットによる販売、輸入販売、国外からの商品カタログによる販売等、商品が我が国に存在しなくても商品は流通し、その際商品には必然的に標章が付されている。いずれも、商標法2条3項1〜8号に規定する「使用」の定義と不可分の関係を有するものであるが、基本的には属地主義との関係において「使用」とは何かを掘り下げて考えなくてはならない、と思う次第である。

 
担当(弁理士 和田 成則
 
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