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菓子商品の比較広告差止事件


平成17年(ネ)第10059号 広告差止等請求控訴事件
 
【事案の書誌的事項】
 
第二審 (知財高裁)
 
平成18年10月18日 判決
 
控 訴 人:原審原告(勝ち!) 株式会社ロッテ
 
被控訴人:原審被告(負け…) 江崎グリコ株式会社
 
裁判長 塚原 朋一
 
【事案の概要】
   
  • 控訴人・被控訴人とも製菓業界の大手として広く知られているところ、被控訴人は自社の製造販売する菓子商品(ガム)について、控訴人の製造販売する菓子商品と黙示的に比較し、控訴人の菓子商品(ガム)より再石灰効果が5倍も高いとする広告宣伝を行っていました。

  • 本事案は、被控訴人の行う比較広告が不正競争防止法2条1項14号及び同項13号に該当するとして、控訴人が被控訴人に対して比較広告の差止及び全国紙への謝罪広告掲載等を請求した事件です。

【主な争点】
   
  1. 被控訴人の広告の根拠となる実験の合理性及び再現実験について。

  2. 被控訴人の行った比較広告が不正競争防止法2条1項14号及び同項13号に該当するか否か。

【知財高裁判決の
要旨】
   
   
争点1:

被控訴人が再石灰化効果5倍、と広告する根拠となった実験(D-2-3実験)の合理性立証のために、第三者により客観的かつ公正な再実験を行い、D-2-3実験の正確性を裏付ける必要がある。

しかし、被控訴人は、困難な実験のため自ら列挙する鑑定人でなければ実験はできないなどと主張し、そうでない限り再現実験の意義はないとして、鑑定人の条件に固執して譲らなかった。

この再現実験は当事者双方が最も力を注いで弁論した点であり、裁判所も最も重視し、審理した点であるが、被控訴人のこのような主張は、D-2-3実験の合理性について、必要な主張を自ら放棄したものと同視すべきものであり、D-2-3実験の合理性はないものといわざるを得ない。

   
   
争点2:

控訴人の主張する、本件比較広告が不正競争防止法2条1項14号及び同項13号に該当するか否かは、D-2-3実験が合理性を欠くかどうかという点にある。

そして、D-2-3実験の実験方法や実験条件そのものには特段不合理な点はないが、D-2-3実験の合理性を失わせる事情は、再現実験によってその実験結果を立証できなかった部分である。

本件比較広告の根拠となった、D-2-3実験が合理性を欠く以上、本件比較広告は不正競争防止法2条1項14号及び同項13号に該当する。

【弊所コメント】
(1)  
本件事件はライバル同士間の事件であるが、被控訴人(被告)の行なった商品「ガ ム」の比較広告について、被控訴人が再現実験を放棄したため敗訴となった逆転判決である。
 (2)  
ライバル同士間において、自社製品の販売を伸ばすためには、相手方製品と比較して自社製品の有利性を比較する比較広告は極めて有効な広告方法であるが、その際には少なくとも、他社の営業上の信用を害するようなアンフエアな行為は避けるべきであり、そう言う意味で本件判決は妥当な判決であると思う。
(3)   私ども弁理士も侵害事実の発見のため、先使用による通常実施権主張のため、あるいは商標周知性立証のためなど、種々の立証行為を伴う事件に遭遇することがあります。
ある事実を立証することは実務上極めて難しい仕事であって、中にはある事実さえ立証できればその事件は充分勝訴の見込みがあると判断したとしても、クライアントからはそのような事実、あるいは書面は出せない、と反対されることがあります。本件事件も若干そのようなケースではないかと思いますが、いずれにしても立証行為には秘密情報の開示を伴う場合があり、難しいものです。
 
担当(弁理士 和田 成則
 
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