新たな特許出願(分割出願)がもとの特許出願(原出願)の時にしたものとみなされる、出願日の遡及が認められるためには、分割出願に係る発明がその原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか、同明細書等に記載した事項から自明な事項であることを要すると言わなければならない。
そして、原告のした分割出願の特許請求の範囲には、原出願の特許請求の範囲に記載されていた「インク取り出し口の外縁をフィルムより外側に突出している」構成が削除されている。
そして、原出願の当初発明本来の目的を達成させるためには、この「インク取り出し口の外縁をフィルムより外側に突出している」構成が不可欠のものであるとともに、インク取り出し口の外縁をフィルムより外側に突出していない構成を採用することは一切記載されてなく、その示唆もない。
また、「インク取り出し口の外縁をフィルムより外側に突出している」構成を採用しないことが自明の事項であると認めることもできない。
そうすると、本件分割出願は平成6年法律第116号改正特許法44条1項の分割要件を満たしていると認められず、出願日の遡及は認められない。
そして、分割出願した日(平成12年12月21日)より以前に公開された刊行物(特開平4‐257452号公報)に記載された発明は、本件分割出願の発明と同一である。
したがって、本件特許は新規性を欠くものといわなければならず、特許無効審判により無効にされるべきものである。 |