ところで、本事件は「正露丸」なる商標は最高裁判決により商品の普通名称と認定されたものであるから、商標権侵害とはいえず、且つ「正露丸」なる商標を付したメーカが多数あることを鑑みるとみると、本判決は妥当なものと判断せざるをえない。
商標権はそもそも出所表示機能及び自他商品識別機能を有してこそ価値を有するものであるが、商標権がそのような機能を維持・確保していくためには、商標権者の不断の努力が必要である。このようなケースとして、典型的な例は昇降機の一種である「エスカレータ」なる商標がある。この商標も当初は自他商品を識別する商標権と認められたが、商標権者が何等権利主張をしなかったため、誰でも一般的に使用するようになり、その結果商品の普通名称となったものである。
この判決を通じて、有名商標をお持ちの方は自己の商標が普通名称化あるいは慣用商標化しないように充分気をつけて下さい。
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