(ア) |
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宗教法人も人格的利益を有しており、宗教法人は他の宗教法人等に冒用されない権利を有し、これを違法に侵害されたときは、加害者に対し、侵害行為の差止めを求めることができる。 |
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(イ) |
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しかしながら、宗教法人はその名称に係る人格的利益の一内容として、名称を自由に選定し、使用する自由(以下「名称使用の自由」という)を有するものと言うべきであり、宗教法人においては、その教義を簡潔に示す語が使用されることが多いが、これは宗教法人がその教義によって他の宗教の宗教法人と識別される性格を有するからであって、そのような名称を使用する合理性、必然性を認めることができ、従って、宗教法人の名称使用の自由には、その教義を簡潔に示す語を冠した名称を使用することも含まれる、とすべきである。 |
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(ウ) |
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これを本件についてみると、上告人の「天理教」の名称が周知であることは認められる。 |
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しかし、被上告人は宗教法人法に基づく宗教法人となってから約50年にわたり「天理教豊文分教会」の名称で宗教活動を行なっており、その前身の「天理教豊文宣教所」を含めれば約80年にもわたって「天理教」の名称を使用していること、被上告人は中山みきを教祖と仰ぎ、その教えを記した教典に基づいて宗教活動を行なう宗教団体であること、その信奉する教義は「天理教」にほかならないこと、被上告人において上告人の名称の周知性を殊更に利用しようとする不正な目的をうかがわせる事情もないことから、被上告人がその教義を示す「天理教」の語を冠したことには相当性があり、被上告人がその名称を使用できなくなった場合にはその不利益は重大である。 |
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その点で上告人が「天理教」の語を含む名称を独占することができなくなったとしても宗教法人の性格上やむを得ない面があると認めざるを得ない、としてこの最高裁判決となったものである。 |