世間一般では使い捨てカメラと称されている「写ルンです」に関する特許権侵害事件であり、使用済みの「写ルンです」を被告が買い取り、新しいフィルムと交換して販売する行為が特許権侵害に該当するかが争われた事件です。
争点は主に次の2点、(1)被告の当該行為に対し「消尽」が成立するか (2)被告の当該行為は「生産」と評価される行為に該当するか、 でした。
「消尽」とは、「特許権者が我が国の国内において特許発明に係る製品を譲渡した場合には、当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し、もはや特許権の効力は、当該特許製品を使用し、譲渡し又は貸し渡す行為等には及ばない」とするものであります(最高裁BBS事件)。
これに対し、裁判所は、上記消尽を前提としつつ、更に、「特許製品がその効用を終えた後においては、特許権者は、当該特許製品について特許権を行使することが許されると解するのが相当である。また、当該特許製品において特許発明の本質的部分を構成する主要部材を取り除き、これを新たな部材に交換した場合にも、特許権者は、当該製品について特許権を行使することが許されると解するのが相当である。」として消尽が成立しない場合を示しました。すなわち、被告の当該行為が「生産」と評価し得る行為に該当すれば、特許権を侵害することになると判断致しました。
そして、本件に関しては、「原告製品は、これを購入した消費者が内蔵されたフィルムの撮影を終えて、現像取次店を経由して現像所に送り、現像所において撮影済みのフィルムが取り出された時点で、社会通念上、その効用を終えたというべきである。」とし、被告の当該行為は、「生産」と評価し得る行為に当たるとして特許権侵害行為に当たるとしました。
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