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使い捨てカメラ事件


H12.8.31 東京地裁 平成08(ワ)16782 特許権侵害差止等請求事件
 
【概要】

世間一般では使い捨てカメラと称されている「写ルンです」に関する特許権侵害事件であり、使用済みの「写ルンです」を被告が買い取り、新しいフィルムと交換して販売する行為が特許権侵害に該当するかが争われた事件です。
争点は主に次の2点、(1)被告の当該行為に対し「消尽」が成立するか (2)被告の当該行為は「生産」と評価される行為に該当するか、 でした。
「消尽」とは、「特許権者が我が国の国内において特許発明に係る製品を譲渡した場合には、当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し、もはや特許権の効力は、当該特許製品を使用し、譲渡し又は貸し渡す行為等には及ばない」とするものであります(最高裁BBS事件)。
これに対し、裁判所は、上記消尽を前提としつつ、更に、「特許製品がその効用を終えた後においては、特許権者は、当該特許製品について特許権を行使することが許されると解するのが相当である。また、当該特許製品において特許発明の本質的部分を構成する主要部材を取り除き、これを新たな部材に交換した場合にも、特許権者は、当該製品について特許権を行使することが許されると解するのが相当である。」として消尽が成立しない場合を示しました。すなわち、被告の当該行為が「生産」と評価し得る行為に該当すれば、特許権を侵害することになると判断致しました。
そして、本件に関しては、「原告製品は、これを購入した消費者が内蔵されたフィルムの撮影を終えて、現像取次店を経由して現像所に送り、現像所において撮影済みのフィルムが取り出された時点で、社会通念上、その効用を終えたというべきである。」とし、被告の当該行為は、「生産」と評価し得る行為に当たるとして特許権侵害行為に当たるとしました。


【コメント】

被告の当該行為は、単なるフィルムの交換行為であり、一見すると「生産」には該当しないように思えますが、当該行為が「生産」に該当するか否かを判断する際には、その物の本来の性質や使用方法、取引の実情等をも考慮して判断する必要があることを世に示した大変重要な事件だと思います。特許製品を適法に購入したのであるから、「消尽」が成立し、当該特許製品に対しどのような行為をしても特許権侵害を構成しないとは言えないことを十分に考慮して、当該特許製品を使用等する必要があると思われます。

 

(参考 H.16.12.8 東京地裁 平成16(ワ)8557 特許権 侵害差止請求事件)
※ 被告が、インクカートリッジをそのまま使用して、インクだけを再充填した行為に対し、「消尽」が成立し特許権侵害に該当しないと判断された事件です。

担当(弁理士 茅原 裕二
 
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